芳垣安洋さんは、ジャズにとどまらず、ラテン、ポップス、フリーミュージックにも精通され、大阪時代から独自の路線を爆進するリーダーでありました。 近年、またご一緒するようになり、ダブルバイオリンのバンド「12本の弦と5人の男」、そしてピアノトリオ「Tales of Another」をご一緒するようになり、継続中であります。
ジャズに出会って深くのめり込む過程で早くJack DeJohnetteに出会った。 一番最初はBill Evansのアルバム『At The Montreux Jazz Festival』を聴いた時だろう。最初はその凄さは未熟な私には理解できず、単にBill Evansを聴き漁っていた中の1枚に過ぎなかったと思う。
Bill Evans~Eddie Gomez~Jack DeJohnetteという奇跡の面子は数ヶ月しかなくとても貴重だし音楽的に突出していたと気付くのに時間がかかった。
1983年。私が19歳の頃、「Live Under The Sky」というとてつもなく大きなジャズフェスティバルが日本であった。大阪公演はたしかフェスティバルホールで行われた。 Sonny Rollins Special QuartetのメンバーはPat Metheny(gt) Alphonso Johnson(b)Jack DeJohnette(ds)という今見てもびっくりするようなメンバーだった。そこで繰り広げられたパワフルで華やかなドラミングにドキドキした。凄いバンドだった!!
程なくして運命的なアルバムと出会うことになる。 Keith Jarrett 『Standards vol.1』そしてvol.2そしてもう一つ『Changes』だ。同じ日に3枚ものアルバムを録音し、時間差でリリースされノックアウトされ続けた。 Keith Jarrett~Gary Peacock~Jack DeJohnetteの3人がマジックかの様に紡ぎ出す音楽は新たな目標、憧れの音楽家としての在り方となった。
Jack DeJohnetteの真髄はここなのだ。野生の荒々しさ、激しいパワー、インテリジェンス溢れる繊細さ、全てが混在し、全てが飛び抜けているレベル。 そして、自らがピアニストでもあるということ。音楽全体を俯瞰してコントールしながらも聴き手を惹きつけるオーラを放ち続ける。 そして疾走感。どこまでもエレガントである。美しい世界。
様々な参加作品を聴いた。最初に書いたように、印象に残る大好きなアルバムの数々のJack DeJohnette率は5割以上だろう。 ・Charles Lloyd「Forest Flower」「Dream Weaver」 ・Miles Davis「Bitches Brew」「Live Evil」 ・Ornette Coleman「Song X」 ・Pat Metheny「80/81」 ・Kenny Wheeler「Gnu High」 ・Miroslav Vitouš「Infinite Search」 ・Lyle Mays「Fictionary 」 ・Eliane Elias「Eliane Elias Plays Jobim」 ・Gary Peacock「Tales of Another」 etc.
そして忘れちゃいけない、日野皓正さんとのコラボ。 「Transfusion」というアルバムで、Roland Hanna(p)Ron Catter(b)Jack DeJohnette(ds)という唯一無二のメンバーをチョイスした日野さんの采配。 この時、Roland HannaさんとJack DeJohnetteさんは初共演だったらしい。 いたく感激し、日野さんに感謝していたらしい。 このバンドで渋谷のオーチャードホールでライブレコーディングが行われ、 「D-N-A Live in Tokyo」として発表されたが、もちろんコンサートに足を運んだ。 カルテットの演奏はもちろんだが、突発的に起こった日野さんとJackのデュオでの「Up Jumped Spring」の凄まじいインタープレイは記憶に新しい。
とりとめも無くJack DeJohnetteさんへの想いを書いてきたが、いまだに彼のマジカルなプレイとして印象に残っているのが。。。 ・Keith Jarrett Standards vol.1「All The Things You Are」 ・同じくvol.2における「If I Should Loose You」 でのプレイ。
この2曲でのスイング感、スピード感は数値的な速度は超越した域に達していて、時空を超えたプレイだと思う。All The Things You Areは何度もライブで再現されたが、このスピード感がないのだ。私なりの見解として、Keith Jarrettの1983年当時はオリジナルでフリーな展開の演奏や、ソロでのインプロヴィゼーションを行っていた時期で、突如としてジャズスタンダードばかりを演奏するという企画にジャズ界が驚いたのだ。Keithがジャズの原点回帰!?スタンダードを!?という期待以上のものが現れてきたのだ。Keithのプレイは自由そのものでビバップのイディオム、すなわちジャズ語とは何か違う独自の語り口、歌をスタンダードのフォーム上で行うという風に捉えられる。4ビートに乗せてスイングするというのとは違う次元での演奏だ。3人の新鮮なる対話が影響して、またとない特別なグルーヴ感が出たのだろう。このStandards Trioは結局35年間にも及ぶ活動を行ったのだが、やはり マンネリ感が出てきたのは否めない。そして、私が言うのは僭越過ぎるにも程があるのだが、KeithはJazz pianistになってきてとても高度なJazz Trioになったのだと思っている。時が経てば変化があるのは世の常であり、Standards Trioも例外では無かった。いや、初期が特別過ぎたのだ。 この2曲の特別すぎる3人の一体感、スピード感はいまだに謎であるし、ドキドキする。
そして、 Keith Jarrett「Standards Live」における「Too Young To Go Steady」という曲だ。これは以前にJazzTokyoというサイトで書いたことなのだが、引用したいと思う。
石井彰(p) 石井智大(vn) 息子のツアーはとても自然体で行えるものになるので、心身ともに安心感があります。智大は大阪での『Jazz From Poland in Japan 2025』に日本を代表してゲスト参加を終えたばかり。また新たな刺激的な経験と自信でどんどん大きくなって行くことが父として頼もしい限りです。今回もこのツアーのため録音したアルバムも持って張り切って参りたいと思います。そして鹿児島だけではありますが、素敵なゲスト玉置玲奈(vo)を迎えた新しい音楽がお聴かせできると思います。九州縦断ツアー皆様にお会いできますように。
45年前、1980年9月15日 Bill Evansはこの世を去りました。享年51歳。彼が残した音楽の数々はジャズにとどまらず人類の大切な遺産、宝と言っても過言ではありません。私も10代の終わりに彼の音楽に出会ったことは人生において偶然とは思えない必然性を感じずにはいられません。音楽的な父だと一方的に思っています。 Bill Evans Tribute Solo Concert開催します。